福島県双葉郡広野町は、2011年の東日本大震災で沿岸部を9メートルの津波が襲い、またその後の福島第一原子力発電所の事故により一時は町民が避難を余儀なくされた経験を持つ(同年9月末に解除)。
認定NPO法人環境リレーションズ研究所は、広野町沿岸部に整備された「ひろの防災緑地」の一部エリアへの植樹活動「Present Tree in ひろの」を通して、2016年より地元住民と都市住民の交流を深めてきた。2018年4月8日(日)に同団体が主催した交流イベントバスツアーに参加した。
当日は早朝に新宿に集合。老若男女が首都圏各地から約40名集まった(半数以上がリピーター)。10時半に広野町二ツ沼総合公園に到着すると、広野町の復興を担う「特定非営利活動法人広野わいわいプロジェクト」と、広野町農家の有機コットン栽培を支援する「特定非営利活動法人ザ・ピープル」の方々に温かく迎えられた。
参加者は、まずはコットンの綿繰り作業に取り掛かる。昨年収穫されたままの塊から小さなゴミを手で取り除き、木製の機具にかけて種を取り出していく。綿の塊から糸を紡ぐ作業にも挑戦し、器用な人の指からは細く長い糸が生み出されていた。
昼食に手作りの美味しいちらし寿司を頂いた後は、この日8年ぶりに復活した伝統神事(通称「たんたんぺろぺろ」)を見学。津波被害を受けた地元鹿嶋神社のお祭りで、神輿は町中を練り歩いた後に海に入り、膝まで浸かって神輿を回転させるみそぎ「潮垢離(しおごり)」を行う。「お祭りが出来るようになったのは心が復興してきた証」と環境リレーションズ研究所理事長、鈴木敦子さん。復活には紆余曲折あったそうだが、町の復興への力強い一歩を見ることができた。
その後は北上して富岡町へ向かい、桜の名所「夜の森」地区を訪問。今年は桜の開花が早く、ぎりぎり残っている花を愛でながら桜並木の間を進んでいくと、正面に帰還困難区域を示すフェンスが。その先には進めないという現実を目の当たりにし、参加者の多くが「事故の影響の大きさを改めて感じた」と帰りのバスで語っていた。
震災と事故の影響は場所によって大きく異なり、復興の度合いや種類も違う。今回ふたつの町の姿を垣間見ることで、一つひとつの課題と丁寧に向かい合うことの重要性を再認識した。
【取材:事務局 藤川 祥子】