【森を守る人々】美しい棚田と森を次世代に残すことが、私の使命―地権者・下田美鈴さん

様々な立場の方が、「森を守ろう」「未来に美しい森を残そう」とご支援くださっているプレゼントツリープロジェクト。そんなプレゼントツリーに関わる人々へのインタビュー連載企画【森を守る人々】、今回は「Present Tree in くまもと山都」第一協定エリアの地権者である下田美鈴さんにお話を伺いました。

「Present Tree in くまもと山都」とは

日本の有機農業の発祥の地といわれる熊本県山都町は、九州の真ん中に位置することから「九州のへそ」とも呼ばれ、日本百名山の一つ、阿蘇山を形成する南外輪山を抱き、南側は九州山地に接しています。 火山活動により生まれた豊かな地形と清らかな水は、絶景”蘇陽峡(そようきょう)”や名勝”五老ケ滝(ごろうがたき)”など多くの景勝地をつくり、美しい自然を育みました。

町のシンボルであり国宝の「通潤橋」

有機農業を核とした、地球と人と命との有機的な繋がりと美しい景観とを次世代へ継承し、将来にわたって豊かな自然を守ろうとする持続可能な山都町の取り組みは、国から【自治体SDGsモデル事業】に選定されています。

2024年3月22日、「Present Tree in くまもと山都」第四弾の協定が成立

山都町が脈々と受け継いできた棚田とその周辺環境が、100年後まで豊かな生物たちと共に存続し続けるために森をつくろう―そう呼びかけて、「Present Tree in くまもと山都」は2020年に第一回目の協定が締結されました。その後も2021年に第2弾、2023年に第3弾、2024年に第4弾と着々とエリアを広げ、これまでに延べ1万6千人以上の里親さんたちを巻き込みながら、プレゼントツリーの森づくりを進めています。

プレゼントツリーとの出会いは、奇跡みたいなタイミング!

―結婚を機に山都町白糸台地に移り住んで42年、という下田さん。この美しい棚田と茶畑が広がる白糸台地で、農薬や化学肥料を使わずに、お茶とお米をつくっていらっしゃいます。まずはプレゼントツリーとの出会いを教えていただけますでしょうか。

下田茶園の茶畑

「小さい時から川や山で遊んでいたからか、もともと環境問題には興味がありました。30年以上前から、電気やガスを使わず薪でお湯を沸かしたり、洗濯やお皿洗いのときに洗剤を使わないようにしたり…。2019年、うちの棚田を見下ろす斜面にあった杉林を、全部伐ったんです。その時に『ああ、ここを自然の森に戻したいなぁ』って思ったんですよ。そうしたらその1週間後に、プレゼントツリー事務局の石森さんから電話をいただいて! 運命だと思いました」

―2019年当時、プレゼントツリー事務局では里親企業の意向もあり、熊本で植栽地を探していました。「地元植生の広葉樹を植え、地域古来の天然林に近い森を再生していく」というプレゼントツリーのコンセプトが、下田さんの想いと見事に合致。トントン拍子に話が進み、2020年6月には下田さんの所有するスギの伐採跡地にて1回目の森林整備協定を結び「Present Tree in くまもと山都」がスタートします。

下田さんのスギの伐採跡地に植えた樹。3年でこんなに大きくなっています!

山都町の持つ「ほっとする」パワー

―2021年には「Present Tree in くまもと山都」植樹ツアーを開催。以降毎年、都市部から里親さんたちを連れて山都町を訪れ、地元の方々と一緒に樹を植えています。この植樹イベントには、毎回下田さんも出席してくださっています。

2023年4月の植樹イベントにて集合写真

「コンクリートの上に種を落としても芽はでないけれど、土の上だと芽吹くでしょう。人間も、土の上に立つと蘇るんです。日々都会で暮らしている人たちが山都町を訪れて、土の上に立って樹を植える。土を触る。皆さんすごく喜んでくださいますし、蘇っていく感じがします。2回3回と繰り返し訪れてくださっているリピーターの方々とは、もう『おかえり』『ただいま』と言い合うような関係ですね」

2021年植樹イベントの様子

「山都町へ来るとね、皆さん『ほっとする』っておっしゃるんですよ。それはきっと、ここが自然とつながっている場所だからなんじゃないかな。自然とつながる、先祖とつながる、人と人がつながる…そういうつながりを感じるから、ほっとするんだと思うんです」

―本当に。この景色を見ていると、なんだか自分の存在が肯定されているような、体の奥底から生きる気力がふつふつと湧いてくるような、そんな気持ちになります。一度と言わず二度三度と訪れたい、家族や友人など大切な人たちを連れていきたい、そう思える場所です。

自然の森を取り戻すことが、私の使命

―下田さんのご尽力で、「Present Tree in くまもと山都」は第2・第3・第4と協定林がどんどん増えています。山の持ち主である地権者さんにプレゼントツリーの意義を説明し、協定にサインしていただくのは決して簡単なことではないと思います。

下田美鈴さん

「はい、すごく大変です。山の持ち主も高齢化していて所有者のわからない山もありますし、持ち主がわかってもなかなか意義を理解していただけなかったり…『天然の森に戻そう』と言っても、頑なに『スギとヒノキしか植えない』とかね。でも、こうやって少しずつでも壊れてしまった森を自然の森に戻していくことが、私の使命だと思っています。今は自分の家から見える範囲の、手の届くエリアだけなんだけれど、ここを美しいまま子や孫に残していきたい。私には2歳の孫がいるんですけれど、孫が大人になったときに、この美しい棚田と森が残っていたら『おばあちゃん頑張ったんだなぁ』って思ってくれるんじゃないかしら」

生命の源である「森」。これからも一緒に守っていきましょう!

―これからプレゼントツリーと一緒にやっていきたいこと、期待することはありますか。

「山を眺めていると、ここ数年でどんどん樹が伐られていて、皆伐放棄地が増えているのがわかる。戦後の拡大造林で植えられたスギやヒノキが伐期を迎えているということもありますが、林業家も後継者がおらず、伐ったら伐りっぱなしになってしまっているところが多いんです。これからも、そういう場所の地権者の方に『自然の森に戻していきませんか』と声をかけていくつもりです。プレゼントツリーでぜひ都会の皆様の力を貸していただいて、一緒に山都町の美しい景色を守っていきたい」

「日本の農村人口は全体の1%。たった1%の人だけでは、農村や里山の風景は守っていけません。森は食のふるさとであり、生命の源です。そこを守っていこうというプレゼントツリーの取り組みは、小さなものかもしれないけれど、とても大事。もっともっと発信して拡げていってほしい。もっとたくさんの人たち、企業を巻き込んでいってほしいです」

―ありがとうございました! 下田さんから語られる言葉は、山都町や自然への愛に溢れていて、心の奥底にじんわりと染みわたりました。この美しい白糸台地、そして山都町の豊かな自然を、これからも一緒に守っていきましょう。

「Present Tree in くまもと山都」は現在里親募集中♪ 来春もイベント開催予定です!

ちなみに…下田さんが有機農法で栽培するお茶は「下田茶園」や道の駅で購入できます。「釜炒り」という製法で作られる緑茶、ほうじ茶・紅茶とラインナップ豊富。リーフとティーバッグも選べるので、TPOに合わせてお楽しみいただけます。いつも飲んでいるお茶と香りが全然違うので、ぜひ一度味わってみてほしい!

下田さんの棚田では、30年前から子どもたちを集めて「生き物観察会」が行われています。農薬や化学肥料を使わない田んぼの中には、絶滅危惧種のメダカやタガメ、イモリなど様々な生き物が見つかっているんです! 昨年、こうした生物多様性を守る取り組みが評価され、「Present Tree in くまもと山都」第1・第3協定エリアは環境省より「自然共生サイト」に認定を受けました。世の中の流れという追い風も受けて、「Present Tree in くまもと山都」は着々と森づくりを進めています。

「Present Tree in くまもと山都」では、現在第4協定エリアにて里親を募集中です。また、来年春には第4協定エリアでの植樹イベントも予定しています。山都町の豊かな自然と大地のパワーを感じに、下田さんをはじめ地元の方々に会いに、棚田と生き物を守る樹を植えに…ぜひお誘いあわせの上、ご参加ください! 参加者募集開始の際には、プレゼントツリーブログ公式LINEなどでご紹介しますので、どうぞお楽しみに♪

Present Tree 事務局

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2-3-12 神田小川町ビル8階
Tel 03-5283-8143 / Fax 03-3296-8656

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