【森を守る人々】目指すのは、多様性のあるまちづくり・森づくり—中川町役場・高橋さん

様々な立場の方が、「森を守ろう」「未来に美しい森を残そう」とご支援くださっているプレゼントツリープロジェクト。そんなプレゼントツリーに関わる人々へのインタビュー連載企画【森を守る人々】、今回は北海道中川町の町役場にお勤めされている高橋直樹さんにお話を伺いました。

林業のまち・中川町

中川町は北海道北部に位置し、森林率87%の林業が盛んな町。山に囲まれ、町の中央部には天塩川が流れています。アンモナイトや恐竜の化石が発掘されることでも有名です。人口は昭和40年代の7000人をピークに減少し、現在は約1300人。日本の諸地域同様、中川町でも過疎化・少子高齢化が進んでいます。

高橋さんは、そんな中川町役場の産業振興課の職員さんです。得意とするのは森林管理で、自然環境に配慮した森林の管理方針の立案や木材の利用計画の策定、木を利用した家具やものづくりに至るまで、様々な森の活かし方・楽しみ方を企画・実践しています。現在は移住定住政策や地域おこし協力隊の募集にも携わっていらっしゃいます。

2018年から植栽が始まった「Present Tree in 中川」の「ニオの森」

そんな高橋さんとの出会いをきっかけに、2018年から「Present Tree in 中川」は始まりました。中川町では人口減少により、かつて牧草地として造成された町営牧場が原野になっていました。「Present Tree in 中川」では放置されていた牧草地に針広混交の森を再生したいと、北海道固有の種であるアカエゾマツの植樹を行っています。

林業のことを、多くの人に知ってもらいたい

—プレゼントツリーを知ったきっかけについて教えていただけますか。

「2017年ごろのことです。当時、中川町での森林管理に携わっていたのですが、どうやったら林業という仕事をもっと多くの方に知ってもらえるのか、どうやったら補助金に頼らない林業を実現できるのか、と悩んでいた時期でもありました。そんな時に、以前からやりとりをしていた北海道大学の吉田先生から、プレゼントツリーという取り組みについて教えていただいたんです。この仕組みなら、民間のみなさんの力を借りながら、森づくりができるんじゃないか、林業のことを多くの人に知ってもらえるんじゃないかと思って、吉田先生にお付き合いいただいて東京のプレゼントツリー事務局を訪れたのがきっかけでした」

—東京まで足を運ばれたんですね! 初めて顔合わせをしたときの印象はいかがでしたか。

中央が高橋さん、左がプレゼントツリー事務局長・石森、右が理事長の鈴木。森のことから町おこしのことまで、話は尽きません!

「最初はどんな方がやられているのかはわかっていなかったのですが、吉田先生への信頼が厚かったので、不安と緊張と期待を抱えながら行った…というのが本音です。実際お会いしてみたら、東京にありながら地方のこと・森のことを真剣に考えておられるんだなという印象を持ちました」

—実際に協働の取り組みが始まってみて、いかがでしたか。

「やはりたくさんの人を都市からこの交通の便の悪い中川町までお連れいただいたくのは、とても嬉しいことでした。それに加え、林業というのはふだん見られることが少ない産業ですから、都市から来ていただいて注目していただくことで、自分たちの仕事に価値があるんだ!と中川町で働いている林業関係者の方々が実感したというのは、すごく良かったです。大変だったことは…あまり思い浮かばないですね」

多様な森づくり、多様な町づくりを目指して

—高橋さんは移住定住政策や地域おこし協力隊の募集にも携わっていらっしゃいます。最近の傾向はいかがでしょうか。

「中川町のような交通の便の悪い町に移住となるとですね、閉ざされた田舎の空間で一生暮らさなきゃいけないんじゃないか…と、思っておられる方がけっこういらっしゃるんです。でも実際は、このプレゼントツリーの取り組みもそうなのですが、実際は都市の皆さんと行き来があります。また、中川町では自然環境に配慮した森づくりを行っているのですが、そのことを中川町に住む私たちだけでなく、プレゼントツリーの皆さんをはじめ町外の方々も発信してくださっている。そういう点からも、中川町は田舎ではありますが開かれていて、都市との交流があります。そこが引力になって、最近では移住者が増えています(具体的にはここ5年で30名ほどが移住したそうです!)。本州からの移住者がメインでですが、沖縄から来てくれた方もいます」

中央に点のように見えるのが、中川町でよくみられるオジロワシ。残念ながらかなり遠く、はっきりと写真には写せませんでしたが、出会えたことに感激!

—これから中川町をどんな町にしていきたいとお考えでしょうか。個人的な意見で構いませんので、教えてください。

「私は長らく森林管理に携わってきたのですが、森はやはりいろいろな樹や植物が生え、いろんな動物が暮らしている、つまり多様性に富むほうが、管理していても訪れても面白いんです。同じように、町も多様であるほうが面白いと思っています。中川町を、いろんな人がいろんなことを自分が好きなようにやっている、そういう多様性に富んだ町にしたいという思いがあります」

中川町へ人を連れてきてほしい!

北海道生まれ北海道育ちの高橋さん。大学のときに札幌に出た以外は、人生のほとんどを北海道北部で過ごしているそうです。

—今後プレゼントツリーと一緒にやりたいこと、プレゼントツリーに期待することはありますか。

「まずはやはり中川町の森づくりの伴走ですね。苗を供給いただいたり管理費用を出していただいたり、これからも一緒に森づくりを息長くやっていけたらと思います。また、プレゼントツリーによってたくさんの方、有名企業や都市部で大活躍されているような方も中川町を訪れてくださっています。それは率直に町にとって良いことですから、継続的なご支援はもちろん、イベントとして都市の方をお連れいただけると、なお励みになるなぁと思っています」

—高橋さん、ありがとうございました!

インタビューの後、高橋さんに中川町の魅力スポットをご案内いただきました。詳細はこちらの視察レポートでお伝えしますが、穏やかなお天気にも恵まれ、どこもとても素晴らしかったです…! 今度訪れたら、ぜひ天塩川のカヌーとアンモナイト発掘を体験してみたい!と思いました。 中川町の魅力や森づくりについて、私たちもますます発信していきます。これからも中川町と中川町の森づくりが盛り上がるよう、プレゼントツリーも精一杯頑張りますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

北海道中川町…https://nakagawatourism.com/

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