東大生と取り組んだ「熱海の森プロジェクト」の成果が、実学研修報告会にて発表されました

東京大学の人材育成プログラム「One Earth Guardians(以下OEGs)育成プログラム」を受講する学生たちが、林業絶滅の危機に瀕した森に向き合い、活用方法の模索を続けてきた「熱海の森プロジェクト」。これまでに現地調査をはじめ、広報活動や「木もれびプロデューサー」での演習・研修など、様々な活動を行なってきました。私たち環境リレーションズ研究所のメンバーもご一緒させていただき、学生さんたちのアイデアや行動力にたくさん刺激をもらいました。

そんな活動の成果が、3月1日、OEGsの受講生たちが成果を発表する「ワン・アーソロジー 実学研修報告」にて発表されました。

OEGsとは

“私たちは自分たちの豊かな生活のために、これまでいったいどれだけのダメージを地球に与え続けてきたのでしょう。100年後、人類が地球上のあらゆるものと共存していける世界を作るために必要な人材。それは一人の天才的な専門家ではありません。自らも専門家でありながら、俯瞰的な視点で人を結びつけ、新しい価値を創造することのできる「巻き込み力」を持った科学者です。東京大学大学院農学生命科学研究科ではそれを「地球医=One Earth Guardians」と名づけ、彼らを育成するプログラムを立ち上げました。「地球医学=One Earthology」の誕生です。”

OEGs公式サイトより

東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の教育プログラムとして、2018年から始まったOEGs。カリキュラムとしては「基礎地球医学」「応用地球医学Ⅰ」「応用地球医学Ⅱ」からなり、今回の発表の対象である実学研修は「応用地球医学Ⅰ」で行われます。現在6期生までが在籍し、各々のテーマに沿って学びを深めています。

「熱海の森プロジェクト」実学研修の成果と課題

発表に登壇したのは、OEGs2期生の鳥井さん・山口さん、4期生の金子さん、5期生の内藤さん・小山さんの5名。日本の森林の現状として、森林の多面的機能が減衰していることの問題点を挙げ、その問題を解決するフィールドとして「熱海の森」の具体的な課題へと落とし込んでいきます。

活動目的に掲げられたのは以下の2点でした。
・熱海の森林に関わる課題の解決方法を検討し、健全で安定な状態に再生する
・地域内外の人々とともに持続的な森づくりを行える体制をつくる

産・官・民との関係構築を行いながら、具体的な課題を抽出し、課題解決のための仮説を立て、仮説を実証するための事業を立ち上げていきます。この事業の一つが、地域内外の森林管理コミュニティを育てるために考案した「木もれびプロデューサー」養成企画でした(内容については過去ブログにて。講習編/演習編/研修編)。

様々な成果や一連の実学研修の中で、学生の皆さんにとってハードルとなったのは「財源」「学生が地域に通い続けるという時間・地理的制約」「森林管理体制構築の難しさ」。また、メインで活動していたメンバーが卒業で抜けてしまうため、「熱海の森プロジェクト」自体を続けていくのが難しいという現状にも直面しています。「今後は興味のある人たちを森に案内していくような形を取りたい」と、中心メンバーの鳥井さんは話します。

発表後の意見交換も活発でした

発表に続き、協働先である環境リレーションズ研究所より理事長の鈴木がコメントをいたしました。「フィールドとなった熱海市は林業が絶滅し、自治体に林政課もありません。100年後には日本の人口は3分の1になると言われている中で、熱海の森は日本未来の縮図と言っても過言ではありません。ここの森をどうにかできれば怖いモノなしだよ!と学生たちをけしかけたところ、ここにいるメンバー含め9名くらいの有志が興味を持ってくれました。課題は大きかったけれど、自主的に動いて林野庁の補助金を取ったり、たくさんの人を巻き込んだのは本当に大きな成果だと思います」

参加者や教授陣からも質問や提案が飛び出し、活発な意見交換が行われました。「担い手育成というのは気の長い取り組みだからこそ、広く長く続けることが大切」「儲かれば企業がやるので、理論だけでいいからビジネスモデルを作ること」「良い意味で東大生らしくない、体当たりで取り組む姿が素晴らしかった」「防災の観点から消防団を巻き込むのはどうか」…中でも印象に残ったのは、「森とつきあうのは100年単位」という話。1年半という短い時間で森に向き合ったとして、はっきりとした成果が見えないのは当然かもしれません。が、100年先、もっと未来を見据えて「森林を取り巻く環境を改善したい」と活動してきた学生たちの想いは、発表を聞いていた人々の心にしっかりと届いたのではないでしょうか。

「熱海の森プロジェクト」の皆さん、本当にお疲れ様でした! 卒業される方も、進学・進級される方も、これからのご活躍を楽しみにしています。また一緒に活動できる機会がありましたら嬉しいです!

Present Tree 事務局

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