3月9日、日清製粉グループが「ふくしまから学ぶ 復興と防災 バスツアー」を開催しました

福島県広野町(ひろのまち)。震災当時、9mもの津波に襲われた沿岸部に、2015年2月に県が整備した2kmにわたる「ひろの防災緑地」があります。この防災緑地の一角にプレゼントツリーでお手伝いした「Present Tree(以下PT) in ひろの」のエリアもあり、都市部と地元住民の交流イベントを行うなど定期的な交流を図ってきました。

東日本大震災から13年。
「PT in ひろの」募集開始当時にもいち早くご支援いただいた企業である日清製粉グループさまが、「ふくしまから学ぶ 復興と防災 バスツアー」と題し、「PT in ひろの」の防災緑地をはじめ福島県双葉郡にある震災遺構や原子力災害伝承館をめぐるツアーを開催されました。

日清製粉グループとは

小麦粉の製造及び販売を主な事業とし、加工食品、酵母・バイオ、健康食品、中食・惣菜、エンジニアリング、メッシュクロス等の事業を加えた企業グループです。社会貢献活動や災害復興にも力を入れており、東日本大震災への復興支援は2013年から継続して行っていらっしゃいます。

2016年「Present Tree in ひろの」募集開始と同時に100本の記念植樹を行ってくださいました。それだけでなく、育樹活動・福島見学ツアーを新人研修の一環として毎年行うなど、長らく福島へ寄り添ってくださっている企業さまです。コロナ禍の活動は制限されてしまったものの、行動制限が明けた今シーズンは、実に5年ぶりとなるツアーを実施されました。

東京駅集合、バスに乗り込み「PT in ひろの」へ

3月9日(土)、東京駅丸ビル前に集合し、バスに乗り込みます。バスの中で一言ずつ自己紹介と挨拶いただくと、福島にゆかりのある方もいれば、初めて福島を訪れるという方もいらっしゃいました。今回は幅広い年齢層の方々にご参加いただきました。

東京を出発してから3時間半、途中渋滞にも巻き込まれながらようやく「PT in ひろの」の防災緑地に到着です! 現地では、「NPO法人広野わいわいプロジェクト」の根本さんと磯辺さんが出迎えてくれます。

吹きすさぶ強風の中、根本さんの被災体験を聞きます。記念碑のあるこの場所には、家がありました。この家の持ち主は、津波が来るから逃げろと言っても「大丈夫、ここにいる」と逃げず、津波に流されて現在も行方不明なのだそうです。「広野町では津波による死者は2名、90世帯が被災しました」と根本さん。参加者全員で黙とうを捧げます。

そこから歩いて、2016年に植樹が行われた「PT in ひろの」へ。まだ寒いので落葉している樹もありますが、どの樹も腰~人の背丈くらいまで生長していました! 東北地方は関東以西に比べて樹の生長が遅いものの、元気に空を目指して伸びている様子に心が温まりました。

樹の傍らには木柱が埋められており、ここに樹のナンバーが刻印されたプレートが付けられています(※現在は植樹の際のプレートの設置は行っておりません)。日清製粉グループさまに植樹いただいた100本の苗木を見つけ、社員の皆様からは歓声が上がっていました。そんな「PT in ひろの」にて、集合写真をパチリ☆

根本さんが、ご自身の被災体験を踏まえて防災の心得を話してくださいました。「津波が来るという防災無線が流れたら、すぐに逃げること。車よりも徒歩のほうが逃げやすいです。というのも、液状化でマンホールが飛び出してしまうので、それを避けて運転するのは大変ですし、道路も波打ってしまうので。また、津波は1回で終わらない。2波、3波と来ます。実際ここでは2波が一番大きかったんです。(質問:被災してこれだけは常日頃用意しておくべきものは?)…敢えて言えば預金通帳と印鑑ですね。その後避難しても車にガソリンを満タンにすることができたし、即アパートを借りることができました」

Jビレッジでサプライズ!

NPO法人わいわいプロジェクト 磯辺さん

バスに乗り込み、ここからは「NPO法人広野わいわいプロジェクト」の磯辺さんがガイドを務めてくれます。磯辺さんの軽快なトークに聞きほれていると、本日の昼食会場のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jビレッジ」に到着しました。被災後2019年に利用が再開された施設で、東京オリンピックの聖火リレーがスタートした場所としても有名です。バスを降りて建物に入ると…出迎えてくれたのは、なんと広野町・遠藤町長! 日清製粉グループの皆様に、遠藤町長から訪れてくださったお礼が述べられます。

「こうしてご来訪いただけることはとてもありがたく、我々の大きな力になります。被災後10年の2021年にも、コロナ禍ではありましたが鈴木理事長が東京から皆様を連れてきてくださいました。深く感謝と御礼を申し上げます。そしてまたぜひ、皆様で広野町へいらしてください」

意見交換も行われ、広野町の展望についての質問が出ると、「福島イノベーション・コースト構想」について話が及びます。東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するため、当該地域の新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトのことで、「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」といった重点分野(以下参照)におけるプロジェクトの具体化を進めるとともに、産業集積の実現、教育・人材育成、交流人口の拡大、情報発信等に向けた取組を進めているそうです。詳細はこちらのサイトから。

車窓から町の様子を見学しつつ、世界で人気のタオルメーカー・浅野撚糸へ

お昼ご飯を食べたあと、一行はバスに乗り込み、遠藤町長と根本さんに見送られながらJビレッジを後にします。ここからはガイドの磯辺さんのトークをお供に、双葉町へと北上していきます。

途中の車窓から見えたものは、津波によって真っ平になったままの土地や仮設住宅、福島第二原発の排気塔、福島第一原発の排気塔、除去土壌等の中間貯蔵施設、震災から13年経つのに壊れたまま放置された住宅、斜めになったままの電柱…地震と津波と原子力、3つの災害が重なってしまった被災地の、復興の難しさを感じざるを得ません。「それでも最近は、この双葉郡にはインターンで来る大学生や、若い人たちの移住が増えているんですよ。13年経って、ちょっと状況が変わってきたと感じます」と磯辺さん。楢葉町では約600人、浪江町では約300人の移住者がいらっしゃるのだそうです。

そうこうしているうちに、昨年オープンしたばかりの人気タオルメーカー「浅野撚糸」へ到着しました。

ここでは世界に冠たる人気タオル「エアーかおる」が製造されています。タオルの購入もできますし(2階のアウトレットが狙い目!)、工場の見学もできます。カフェも併設されているので、ゆっくりコーヒーを飲むことも可能。ただ今日は残念ながら時間がなく、さーっと買い物を済ませてバスへ戻ります。

東日本大震災・原子力災害伝承館

東日本大震災・原子力災害伝承館は、福島県双葉町にある県立の施設で、2020年9月に開館しました。これまで通ってきた道路にもあった放射線を計る線量計が、伝承館前にも設置されています。

まずは入ってすぐのシアターで、地震・津波・原子力事故発生当時の映像を見てから、展示室へと入っていきます。災害の始まり、原発事故直後の対応、被災した県民の声、復興へ向けての挑戦という流れで、映像や模型を使った展示が進んでいきます。ちょうど企画展として開催されていた「人が語る原子力災害」では、避難や避難生活を経験した人々の証言が展示されていました。やはり一人ひとりの生の言葉というのは重みがあり、胸に迫るものがありました。

展示室を出ると、目の前に真っ平な土地とその向こうに海が見えます。天気が良くて海が見える、時と場所が違えば「気持ちのいい景色」かもしれませんが、展示を見たあとにこの景色から感じるのは悲しさ・虚しさ・寂しさ、やりきれなさ。それでもこの土地で未来を切り拓こうとする地元の方々の、力強さ。まだ訪れたことのない方は、ぜひ一度訪れてみてください。

参加者の皆さんで記念撮影。原子力災害伝承館前で

津波の被害がそのまま残る、請戸小学校

続いてバスは浪江町立請戸小学校へ。海沿いに建つ請戸小学校は、校舎の1階天井まで津波に襲われながらも、児童・教職員全員が避難できた「奇跡の小学校」と言われています。震災遺構として、津波の被害のありのままが展示されています。

黒板、ロッカー、壁、天井…躯体がむき出しになっている箇所ばかりですが、ここが教室だったことは伝わってきます。パソコン、がれきまみれになった水道、ぐちゃぐちゃになってしまった給食室、文字通り床が波打った体育館(ステージには卒業式の文字)、津波が到達した15:39のまま止まった時計。子どもたちの日常がいきなり奪われたことがまざまざと感じられ、胸が締め付けられます。

床の一部だけの被害にとどまった2階には、展示室になっています。被災前の請戸地区の模型や、卒業生や地元の方から寄せられたメッセージが書かれた黒板、体験談の映像も見ることができました。

最後は「道の駅 なみえ」で休憩&ショッピング

だいぶ日が傾いてきました。「ふくしまから学ぶ 復興と防災」バスツアーも終盤です。最後は2020年にオープンした「道の駅 なみえ」にて、休憩とショッピングを楽しみます。さすが「道の駅」、地産の野菜や地酒に自慢の加工品、お土産もたくさんありました! 地元のものを買うことで、復興支援になります。(請戸漁港に水揚げされた海の幸をふんだんに使った海鮮丼が食べられるレストランもあるのですが、この日は食事はできずで残念…!)

ここで、1日ガイドをしてくれた磯辺さんともお別れ。いろんなお話を楽しく興味深く聞かせてくださり、本当にありがとうございました!

帰りのバス車内で、参加者の皆様にアンケートをご記入いただきました。今回のツアーを「とても良かった」とおっしゃる方が8割近く!「駆け足だったけれど、1日でこれだけ見せていただけて良かった」「テレビで見るだけでなく、実際に見れたので現実感が増した」「地元の方々の貴重なお話が聞けて良かった」「次回は見学だけでなく、参加・体験ができると良い」「日帰りじゃなくて1泊したい」「自分にもできる復興支援をしていきたい」…と、それぞれに想いを綴ってくださいました。いただいた想いをしっかりと受け止め、今後の企画の参考にさせていただきます。

改めまして、ご参加くださった日清製粉グループの皆さまに、厚く御礼申し上げます。また来年も、一緒に福島を訪れましょう!

今回立ち寄った場所はこちら↓

Present Tree 事務局

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2-3-12 神田小川町ビル8階
Tel 03-5283-8143 / Fax 03-3296-8656

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